「杉本です。...辻村さんは良い仕事をしますね」はじめて電話をいただいた時、
勝手に強面な印象を持っていた私にとってその声は至極優しく丁寧で驚きました。
大阪の商業施設の環境デザインをされていた杉本さんは、その施設のリーシングからデザイナー選定までされていて、
私にその施設に出店予定のブランドを全て提示され「どのブランドが良いか選んでデザインしなさい。」と...、
常にクライアントに選ばれる側のデザイナーにとって、通常では無い仕事の依頼にデザイン界の重鎮の腕力に慄きました。
大阪ハービスエントの氷の世界/MAIMONでした。
その後、様々な施設の設計や会合でご一緒させていただきましたが、その度毎に「綺麗なものより強いものを創れ」と言われました。
ついついデザインを置きに行こうとする狡い自分を見透かされているようで、
反省し、考え直し「強いデザイン」とは何かと自身に問い続けて来ました。
最も大切な思い出は、札幌での講演の合間に抜け出して、二人で酒を飲んだ事です。
どうして僕とだったのか思い出せませんが、この時だけはデザインの話は無く、お互いの身体の話しだけをしたように思います。
ポテトサラダとビール、遅い札幌の春の桜の花が綺麗で、溜息の様な時間を共有できた事が嬉しくて、その光景を今も鮮明に覚えています。
合掌