黒川勉の死

2005-07-31

独立して間もない頃、新宿のOZONEギャラリーで「辻村久信の家具」というタイトルで小さな展覧会をさせていただいた。当時僕と同世代で独立したばかりというデザイナーが沢山きていただいた。結局それを機会に今もつきあいの続くデザイナー達が沢山居る。その中の一人が当時Hデザインの黒川勉だった。身銭を切って自分のデザインの家具を創りポートレイトを作って若手のファッションデザイナーにプレゼンテーションして廻るというような事をしていると話していた。僕には到底出来ないポジティブさに驚いた、そしてその目の奥にある純粋さに眩しい輝きを確信していた。
あれから10年、いくつもの作品を発表して、僕たちはデザイナーとして何とか知られるようになった。僕たちはそれなりにデザインの力を信じ、それなりに戦って生きて来た。でも、僕たち同世代のデザイナーはいったいなにものと戦っているのだろう。
時々解らなくなる。結局とてつもなく大きなナニモノかに操られているだけで何も変わらない無力感にさいなまれるときがある。
黒川勉の死は僕にそんな想いを起こさせる。

辻村久信

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