十年前の8月15日、僕はバリ島にいた。
二週間ほどの予定でバリ島にある(離島も含めて)アマンホテルをみてまわる旅をしていた。
図らずも終戦記念日を元日本の占領下にあった地で迎えることになる訳だけれど。それに気ずくのは町中の至る所に貼られている独立記念日を祝うポスターや垂れ幕等によってだった。そのショッキングな赤色に、なぜか反日のムードを勝手に感じ取って、なんだか肩身の狭い思いをしていた。
その時アテンドしてくれていた日系の女性にその事を話すと、僕の知らない終戦当時の話しをしてくれた。
そもそも17世紀以降オランダの植民地であったインドネシアを日本軍はそのオランダを追い出すかたちで占領下に治める。しかし、日本の敗戦が決定するや、再びオランダによって植民地下を目論む侵略が始る。それに抵抗したインドネシアの人達を決起させたものは、同じ小さな島国である日本が世界の大国を相手に戦った、結果敗れたにせよその現実だったという。
また敗戦後、帰還命令の出ていた日本軍兵士の約3割がインドネシアに留まりインドネシア軍としてインドネシアの人達と一緒に戦ったという。今もその時の何人かの元日本兵はこの地に残っていてインドネシア政府から独立の英雄として手厚く生活保護されているという。日本という国はかれらにとって英雄の国であり憧れなのである。
僕たちは戦争というものを話しの中でしか知らない。知識として知っているつもりでいる。しかしその歴史は一方的で偏見に満ちているように思う。
国によって、語る人間の立場によっていろんな側面があって、その見方はどれも真実である。
靖国参拝を非難する中国や韓国、それを肯定する日本政府もおなじで、唯一は広い意味でゆるしあう事ではないかと思う。
終戦記念日に思った事です。
辻村 久信