明けましておめでとうございます。

2006-01-01

十年一昔といいますが、今年は辻村久信デザイン事務所として十一年目の年、新しい十年の始まりの年になります。
10年前の4月29日、当時ナショップのライティングコンテストの最優秀賞でもらった賞金を元手に『京都/雪月花』で独立記念のパーティーを開いた。考えればこれが公には辻村久信デザイン事務所の創立記念日ということになります。実際はその年の2月にはリブアートを退社して、3月からはなんとなく事務所の看板をあげて仕事をしているということになるわけですが、実際はそう簡単にデザインの依頼もあるわけではなく、ただぼんやりと過ごしていたように覚えています。
当時、事務所は麸屋町通り二条を上がったところの路地の奥に三軒長家を借りて、それをひとつの空間に改装して使っていました。
朝は、犬の散歩から始まって一日中電話の前で「誰かからかかってこないかなぁ」と考えている内に夕方になり、また犬の散歩をして家に帰るといった毎日でした。今から考えればよく生活できていたと思います。
そのうち、暇を見兼ねた人達から仕事をいただき(震災の復興計画の一部だったと思います)、ひとつまたひとつと仕事をしている内にあっという間に十年経ったという感じです。自分から何かを仕掛けていくわけでもなく、コンペティションすらあまりしたことがなく、ただ現れる目の前の仕事に夢中になっているうちにここまできたきたように思います。結局、恵まれていたという事です。
さて、これからの十年も多分本質的には同じようにしてデザインしてゆくでしょうが、今年は原点に帰る年としてデザインの在り方、デザインの手法、デザインの意味を問い直し、今まで、とにかく吐き出したものを今度は整理してひとつづつ完成させて行く年にしたいと思っています。

『モノよりコト』この言葉は、僕がデザインというものを始めた頃よく思っていた言葉で、常にそのようなことを言っていました。カタチそのものではなく、そのカタチが生まれる過程、またそのカタチを取り巻く環境を含む関係性をデザインすることを重要と考えていました。今から思えば駆け出しの若造の戯言のようでもありますが、その事が自分のデザインの組み立ての原点になっているのは確かで、今になっては日本人のデザインの手法そのものでは無いかと思うのです。
★辻村久信

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