京都クオリティ/茶の菓の表現

2009-05-03

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陰(かげ)が陽(ひかり)の対極である以上、闇の中でこそ、真の明かりを感じることができると思うのです。陽の光りを反射しない新月の夜も記憶の中にある月は、その残像として夜空に映るものです。究極の光りは真の闇の中でしか感じることができないもの…

影を創る事によって、光そのものを感じる事は出来ないか?究極の明かりとは、影の中にこそ力を秘めているものではないか?

際限なく消費された灯りの中では、もはや灯りはその本来の意味を失っている。様々な素材が持つ本来の色が創りだす”黒のグラデーション”は、唯一の灯りを支える。

濃密な闇となり、濃厚な濃い茶の余韻となり、そして、その灯りは、伝えたい唯一の言葉(メッセージ)を照らす。唯一の言葉、”茶の菓”を伝える空間。

この空間は、谷崎潤一郎の『陰影礼賛』にインスパイヤーされた。 ただし、その表現はより未来的なものを暗示しています。


(辻村 久信)

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