木は育った年代と同じだけ切られてからも生き続けます。
のこぎりや刃物で木を切るという事は木をちぎっていくという事。人の想いどうりに造形していきます。
しかし、木を割るという事は、その気の持っている本来の形に添って造形していく事で、切られてからの木の寿命も伸びると思います。
人の意思と木の意思とがひとつになって有機的な造形を生み出します。しかし、この技は木を見極める、木と話せる人しかできない事です。
地球温暖化の関係から、樹を切らない事も必要ですが、木を切り道具として使う事で人の生活が豊かになるという事も有ります。樹の切り方と使い方が問題です。特にデザイナーにとっては、樹の使い方は、重要でその樹の持っている本質と癖を見抜き、また「使い切る」という事が大切であると思います。木を割るという事は樹を使いきる事にも繋がります。使い切るという事は樹だけに限らずモノに対する愛情の表現のひとつだと思う。
(辻村 久信)