緑水庵(ryokusuian)のデザインコンセプト
水を縁に起する庵/此処にしかないもの、此処でしかない事
古代より音羽の山に滾々と湧き出る清水(せいすい)は、
豊かな庶民信仰の対象として多くの人を魅きつけている。
水は人と人を繋ぎ、人から人へ伝わって
此処にしかないもの、此処でしかない事を創りだす。
自然に手を加えていない様に見える無作為の美しさは
偶然の反復と整頓、不均質の質感の連続から長い時間をかけて完成に近づく。
清らかな湧き水が溢れる様に空間が立ち上がり、
清らかな湧き水に寄り添うように商いを成す。
継続は変化をも包括する包容力、すべては"水のゆくえ"のままに...
既に此処にあったような、坂の途中の茶店/緑水庵。
此処にしかないもの、此処でしかない事。
[清水坂 緑水庵の地鎮祭]
清水坂の途中に"緑水庵"と名づけた建築をデザインしています。
先日は既存の建物の解体も終わり、晴れて地鎮祭を迎える事ができました。
地鎮祭には、その土地の神(氏神)を鎮め、土地を利用させてもらうことの許しを得る事であると同時に、神を祀って工事の無事を祈る儀式であり、安全祈願祭と呼ばれることもあります。このような儀式は、昨今では省略されがちですが、人の営みの長い歴史の中で培われてきたその土地への畏敬の念を大切にする気持ちはとても必要な事で次の世代に継承していくべきものと思っています。
背中に染め抜きの屋号が記された長半纏を着た棟梁の後ろ姿から、敷地を越えて東山が見えます。
音羽山/清水のこの地に清い水が湧き出るがごとく人々の集まる豊かな場ができる事を念じて、この土地に建築させていただく事に感謝し、丁寧な仕事を積み重ね新しい歴史の基礎を築ける様心がけます。
(辻村 久信)