普段なにげなく使っている"民藝"という言葉は、宗教哲学者、美術研究家で民芸運動の主 唱者でもあった柳宗悦(やなぎむねよし)の作った造語である。
大正時代、ファインアートではない、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の中に「用の美」を見出そうとする民藝運動は、21世紀の現在でもコンセプトは色褪せず、活動が続けられている。
民藝館には展示されている作品の詳細な説明はありません。
「知らば見えじ、見ずば知らじ」
モノの背景を知ってしまうと本来の姿を見失ってしまう、虚心にモノを眺める事によって、日常の美を体感してほしいという柳宗悦の言葉どおりの半ばぶっきらぼうともとれる展示風景です。しかし、そこには確実に生活の中から生まれる機能が豊かな美しさと共にあって、力強いメッセージを感じる事ができます。
デザインは言葉では語れないものを形や色空間を使って他に伝える事のできるコミュニケーション手段です。
(辻村久信)