20代の頃は、先人の建築やインテリアデザインを本当にたくさん見に行った。
しかし、この2〜30年はわざわざ建築やインテリアデザインだけを見にいく事は無い。
娘の二十歳のお祝いに淡路市の「ここちよ」に河豚を食べに行った。
河豚を特別うまいとは感じない私ですが、ここのふぐはちょうど具合が良い。
インテリアデザインや調度品、接客も清潔感があり若い創作に満ちている。
この料理屋に向かう細道を登っていくと、曰くありげなコンクリートの曲面が常緑樹の間から見えます。
このコンクリートは安藤忠雄さんの匂いがすると思ったら、やはりあの蓮池の下に本堂がある本福寺の水御堂でした。
91年竣工で随分話題になった建物ですが、今まで見学する機会に恵まれなかったので、これを出会いに見せていただきました。
安藤忠雄さんの建築は私にとって、どれも第一印象スケール感がしっくりこない不安な気分になってしまいます。
この水御堂も、イメージしていた大きさとは少し違ってもっと大きな建築の様に思っていましたが、実際に体験するとちょっと小さいなと感じました。
逆に天保山の大阪文化館(旧サントリーミュージアム)は写真の印象よりも大きく感じます。
コンクリートという素材の持つスケール感でしょうか、シンプルな構成がそう思わせるのでしょうか。
距離感が掴めない不安な感じを受けます。
スケール感は距離や大きさを正確に感じとれる客観的な感覚のことですが、実際にはそのものと比較する絶対的なものがないと上手く機能しません。
頭の中で考えているだけでは、そのスケールは自身の感情によって大きくなったり小さくなったり都合よく変化します。
だから、実際にみる事(体験する事)が必要になります。その体験が定規になります。
デザイン する時も頭の中で考えている事をまずスケッチなりアウトプットしてみる。
そしてそのスケッチを客観的に見るとそこにはそのスケッチを取り巻くリアルな空間環境必ずあり、寸法が見つけられます。
その訓練がスケール感をつくっていくのではないかと思います。
本福寺の水御堂もこれで私の中の定規のひとつとなって記憶されました。