私が住宅をデザインするのは極限られた共通する趣味を持ったクライアントだけです。
それは、商業施設などと違って住宅のデザインに成功とか失敗とか端的に判断するものがなく、気に入るもしくは、いずれ気に入っていく過程のようなものを共有できるかということが創作の大部分を占めるからです。
私の設計するいくつかの住宅のデザインに共通することは、厳密にいうと未完成であるということです。
白い上質のキャンバスのような、スッターターキットのような、住人が住人の暮らしの中で変化してゆくことができうる許容範囲を持った(または、包容力のある)デザインであるということです。
私にとって住宅デザインはクライアントと最初のスタートラインを創ること未来に対するベクトルを決めることにあるのです。
設計理念としては、計画は単純にすること、抽象性を貫くこと、そしてイメージの飛躍を助けること。
使用する素材は、時間を経て美しく朽ちていくもの、使い込むほどに味のでてくるもの手の質感を感じるもの、しかしその手仕事に逃げていない完成度の高いものを使うようにしている。
辻村 久信
(辻村が以前受けたインタビューより、住宅について抜粋)