商業空間をデザインする時、最近はその消費される事への違和感の様なものを感じ続けています。
実際にはその空簡には寿命はあるけど、デザインする時にはその寿命を感じさせない様なデザインはできないものかという事をいつも根底に考えている。
その為にデザインを世に出していく時、「”個性”と”時代性”と”普遍性”がこのデザインにはあるのか?」という事を自己検証することを心がけています。
“個性”はそのブランドなり空間の”らしさ”であります。これは如何に商品なりオペレーションを知り、その特性を見いだし表現する事でもあります。
“時代性”は、その時代のムードを表現出来ているかという点です。これもいかに時代と表現が共感出来ていつかという事につきます。
“普遍性”が、一番難しいところです。それは予知能力の様なもので、このクリエーションが普遍的に社会に受け入れられていくべきものなのかという事を想像しなければなりません。
唯一の手がかりは、過去の歴史に見る事です。デザインの歴史の中で消えていったコンセプトは山ほどあります。(属にアバンギャルドと言われているものであるのではないかと思っています。)この長い歴史の中で淘汰され現在にも残っているデザインコンセプトは、その経てきた時間は将来生き続けていくのではないかと考えています。
例えば、ストラスブルゴのすべてのショップコンセプトの根底にあるユーゲント・シュティール(独:Jugendstil)は、ウィーンの分離派からバウハウスに遷り、現代の日常の生活様式に迄影響を与えるコンセプトになって100年以上生き続けているデザインです。
新しいストラスブルゴの二子玉川店もこのユーゲント・シュティールのコンセプトが根底にありますが、それに加えこの二子玉川の”場”の持つポテンシャルを考えて陽の光が燦々と降り注ぐテラスの様に、ある特定された邸宅の一部をイメージした空間のデザインにしています。このデザインで最も重要なポイントは照明計画でした。空間を細いスチールのフレームで囲み、その格子の様なフレームに仕込んだ照明器具を天井面に照射し、その灯りのリフレクション効果で間接的に柔らかな光りが空間に充満するようにしています。ダウンライト等の点光減になれてしまっているショップデザインの中で、この灯り環境は意外性をもって新しく感じると共に、全体照明としては普遍的な手法として印象づける事になるのではないかと思っています。また、大胆にフレキシビリティを最優先した空間は、様々な気分に共鳴してレイアウトを変更する事ができ、いくつもの情景を創る事ができます。
少し”ショップらしくない”という点では、今迄のストラスブルゴとは少し違うインテリアデザインにしていますがその結果、商業空間にありがちな一種の入りにくさを軽減し、尚かつ親密度を増す事で居心地間の良い空間を創りました。
この空間が、現在のショップデザインの分水嶺となり、また時代を超えて評価される価値を持つものになってくれないかと考えています。いずれにしろ、体験する人達が”個性”と”時代性”と”普遍性”を感じる事ができるのか評価を待つところです。
(辻村久信)
■STRASBURGO玉川高島屋店
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