京都芸術大学の最終講義を聴講いただきありがとうございました。休日の夕刻にもかかわらず学長をはじめたくさんの先生方、大学関係者、並びに卒業生、在校生の方々に加え学外の方々にまでお越しいただき大変恐縮しました。この場所でこの様に話せるのが最後かと思うととても寂しくもあり感慨深く、この状況を確と心に焼き付け、これからの創作の活力にさせていただこうと思いました。ありがとうございました。
▪️2023年京都芸術大学最終講義
「利他」デザインができること デザインでできること
依頼は断らない。過去30年近くの間に約2000件近くのデザインをしてきた。自分のためにデザインしたものは一つもない。1990年に誓った「何かの役に立つこと、誰かの為に」を実践してきた。
創作には「ふたつのタイプ」がある。
①純粋に自身の為に創作することで喜びを感じるタイプ ②自身の創作が与える他の人が喜びが自身の喜びになるタイプ
デザイナーは後者のタイプ。依頼主やその向こう側にいる社会の幸せの為に創作する。
そもそも、デザインの語源はデッサン(dessin)と同じく、"計画を記号に表す"という意味のラテン語designare(デジナーレ)である。つまりデザインとは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じてわかりやすく表現すること。
計画は、問題を意識するところから生まれる。「デザインの起因は問題点を意識することが重要」目標を達成する手段、それを誰にでもわかる様に可視化する。「問題を解決する」「わかりやすく表現する」この考えの根底にあるのは「利他」=他を思いやる心です。
すべてのものに有限性があるということが明らかになった今、個人の欲求より地球規模の公益を優先することが持続可能な社会をつくることとなります。また、「社会の豊かさ」が「個の豊かさ」に繋がり、そして「個の豊かさ」が増殖して「社会の豊かさ」へと循環していく。戦争も災害も疫病も全ての問題を乗り越えていけるはずです。
「他を思いやる心こそがデザインの本質です。」
まず、デザイナーは、自分以外の誰かの為に、何かの為に、「デザインのできること、デザインができること」を考えよう。そういった「利他」を根幹に持つ日本の思想がグローバルスタンダードとなることとなれば、人類は持続可能な社会を創る事ができるのではないかと信じています。