さんび堂

SANBIDOU

PHOTO : 下村写真事務所 / 下村康典

NOTES

デザインする事は、常になにかしら新しい事への挑戦である。全地球規模で持続可能な社会構造へとパラダイムシフトしていこうとする新世紀において、新しいものを創るデザイン行為は既にあるものに対して畏敬の念を持って接しなければならない。それは、持続してきたものを助走にかえて進化への力を得ようとするデザインに他ならない。さんび堂の場合もそのような進化を内包した老舗のデザインである。

近代的なビル内部に日本建築における梁と柱の組み合わせによる木軸在来工法の空間を創る。「そのように見せる・・・」書き割り的なアミューズメントパークの様な表層だけをなぞった劇場空間ではなく、構造体から本物の無垢の木材料で建築する事で、ビル内部に木造建築そのものを新たにを挿入するといった方法をとっている。故に空間を訪れる客は、エントランスから、そこが鉄筋コンクリート造のビルであることを認識する事はないし、幾ばくかの時間を経た空間のように感じられる。

また、空間全体を取り囲むような木製の柱間に設けられたディスプレイのスペースは、床の間のしつらえの延長線上で丁寧なプレゼンテーションの装置としてあるだけではなく、おもてなしの「所作」を具現化する舞台としての背景を演出している。

中央天井の手漉き和紙で創られた行灯照明は、そのスケールアウトしたバランスと圧倒的な光量で外部からの視認性を向上させるだけではなく、平瓦の床材に柔らかく反射して環境全体の明かりを制御し空間内部の意識を重心に向かわせる装置となっている。

老舗のデザインとは、守り続ける事だけではなく、その軸線上で常に進化し続ける事である。

SPECIFICATIONS

所在地
京都市下京区室町通綾小路角
Muromatidoriayanokojikado, Shimogyo-ku, KYOTO 600-8422 Japan
撮影
下村写真事務所 / 下村康典
平面図