NOTES
この座イスは、私のデザインする和食店や旅館などで使用するために考えました。ほとんどの座イスは、畳の上で座布団と対になって背中を支えるようになっているため、必然的に畳を意識したものになり、正座やあぐらといったものの延長線上にあります。しかしこの「環」は、発想の過程がまったく逆で、まずイスに座るポジションがあって、それを低くしていくことで水平方向に広がる日本的な空間に違和感なく溶け込むようにしています。座布団より少し座面が高いことで長時間座っていても疲れにくい、あぐらをかくことが苦手な人でも足が痛くならない、座りやすくて立ちやすい、などの利点が生まれます。また、従来の座イスを使うときに脇息というセパレートの肘掛けを使うことがありますが、「環」では肘掛けを背中をホールドする部材と一体となったデザインで設けています。 この背中から肘掛けを一体にしている成形合板のループが"環"の名前の由来でもあり、特徴でもあります。一枚の積層合板からくり貫かれた輪を立体的に立ち上げ、単純なループがイスとしての機能を与えています