音楽のように寄り添うウィンザーチェアー/Verdi chair for Verdi Le café Artisanal

PHOTO : ナカサ&パートナーズ

NOTES

ウィンザーチェア研究家であるアイヴァン・スパークスは、シンプルで壊れにくいことがメリットのウィンザーチェアを「厚い木製の座面を基盤として、椅子の脚、背棒などが直接座面に接合された椅子である」と定義付けしました。

ウィンザーチェアはバナキュラー・ファニチャー(Vernacular Furniture)の一つでもあり、つまり英国固有の家具であり、自国の木材を使った家具です。17世紀にイギリスで轆轤の技術を活かした装飾的な「スローンチェア」を制作していたジョイナー(指物師)とターナー(轆轤師)が地方に住むつくようになってその土地固有の椅子を作り始めたのが起源とされています。そのデザインの一つにロンドンの郊外西方の街ハイ・ウィカムを中心に作られるようになっていった椅子がウィンザーチェアと呼ばれるようになり、当初はガーデンチェアとして王侯貴族に使われていたが、やがてそのシンプルなデザインと頑丈な構造で庶民の家具として一般の住宅やオフィス、パブなどに使われるようになって世界中に広がっていきました。

「Verdi chair」はウィンザーチェアーの延長線上にあるデザインです。ウィンザーチェアーは当時主流であった装飾的な家具とは一線を画したシンプルで実用的なものでした。しかし、現代から見るとまだ装飾的に見えてしまいます。ウィンザーチェアーの延長線上で、最小限の構成部材を現代の技術を使って、よりシンプルでモダンな空間にも合う様な椅子をデザインしました。

「Verdi」の名は、19世紀を代表するイタリアのロマン派音楽の作曲家ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディに由来します。当時やや形骸化していたイタリア・オペラを活性化させ、最高の高みに導いた存在であるヴェルディの音楽性は大衆性でもありました。

そんな作曲家の名前を持つカフェの空間は音楽の様に生活の中に浸透していく柔らかさを持っています。

ヴェルディの為の椅子のデザインもまるで音楽の様に使う人の身体に寄り添うフォルムをしています。

SPECIFICATIONS

クライアント
Verdi Le café Artisana
設計
辻村 久信
製作
飛騨産業
製作協力
株式会社アルク
撮影
ナカサ&パートナーズ