Redesign of the RINseries /RIN023 ARM LESS CHAIR

RIN2023

PHOTO : AKASE株式会社

NOTES

AIDEC MODERN は1977年に東京の西麻布にて設立され、以来ヨーロッパの高品質なモダン家具を提供し続けてきたアイデックのオリジナルブランド。アイデックのオリジナル家具シリーズ「ALMA」が2004年にリニューアルに伴い発表された「RINシリーズ」はArmless chair とArmchairs で構成され、共にホワイトアッシュの無垢材の背板のファブリック張りのバリエーションがあり、2018年まで販売されていました。

新たなカフェ文化が東京に展開し始める2000年代初頭、TOMATOと共作でデザインした渋谷の『和カフェyu so shi』はその先駆けであった。2000年にオープンし、その後『中目黒 chanoma』の発表と共に「和カフェ」のブームを創り、芸能人がお気に入りの店として挙げるなどメディアでも多数取り上げられた。カフェという洋的なものからの脱却、日本人にとってほんとうに居心地の良いカフェとはどのようなものかをテーマに、インテリアデザインからアート・音楽に至る環境すべてを提案して「和カフェ」という文化をつくった。

この時期に発表されたのが和カフェの為の椅子「RINシリーズ」でした。椅子という洋的な記号を分解して日本的な手法で再構築されたRINは、カフェ業態にとどまることなく様々な「和的な環境」で使われるようになりました。

「R・rin 2023」は、2018年アイデックの事業停止に伴って、製作販売が滞ってしまったことによる新しい製作販売先を探すところから始まりました。

旭川のデザイナーの近藤俊介(RINの製作図面を描いていただきました)との出会いからAKASE株式会社/北村浩三さんとの出会いが新しい「R・rin 2023」を誕生させました。「R・rin 2023」のRはredesignのRです。

「リ・デザイン」とは、製作時における「完成されたデザイン=最適解」を、さらに「今・現在」を持って「最適化」することで、現設計に及ぶ追求の結果に対して、その踏襲または否定、あるいは不備・不足を補完するだけの行為ではなく、発想の源の確認、見直しから現実化していく制作過程を通して更なる最適化を目指す行為であると思います。

現在(2023年)の日本的な空間を再考し、雰囲気は現設計のままを維持しながら、「今」という時代のムードを体現したディティールや座り心地の向上を考えて、マスターウオールの製作陣との打ち合わせ・試作を重ね、詳細な修正を加え完成しました。

また、主材料をウォールナット材で製作することによって更に繊細なフレームで華奢に感じるようになりました。

既に日本社会でも成熟した「椅子のある生活環境」において、日本のデザインとは何か、日本の椅子とは何かを問うきっかけになればと思います。

※「リ・デザイン」とは、高度な次元で「完成されたデザイン」(最適解)を、さらに「最適化」することの意である。よって、先行する追求の結果に対して、その踏襲または否定、あるいは不備・不足を補完するだけの営為ではない。

むしろ、目的に適うアイディアの具現化、それに伴う現実の諸条件を「すり合わせる」膨大な試行錯誤、すなわち「妥協案」から「最適化」までがデザイン、と評してよいだろう。(橋本優子/宇都宮美術館主任学芸員)

SPECIFICATIONS

WEBSITE
https://www.masterwal.jp/shop/g/gRNDC/
発表
2023年10月19日
設計
辻村 久信 ウォン リタ
種別
ダイニングチェア
製作
AKASE株式会社
製作協力
シロロデザインスタジオ 近藤 俊介
AKASE株式会社 北村 浩三
サイズ
W485,D523,H745,SH450
撮影
AKASE株式会社