NOTES

"無動"な空間

「ブルーカフェ」は、沖縄県那覇市の繁華街である国際通り近くの比較的静かな住宅街のはずれにある。クライアントとの出会いは、私のデザインした一台の照明器具からであった。

それは片方にだけ電極のある特殊な蛍光灯を利用したフロアスタンド型ライトで、その光源が放つ青い光から、「ブルーカフェ」のデザインが始められた。空間を構成する、床、壁、天井の存在をできるだけ少なくしたり、淡い暖色系の白を基調に統一するなど境界が曖昧で、〈無動な空間〉を計画した。また、漂う青い光は、ダブルスキンに設けられた壁の内側に塗られた蛍光色の青に、青フィルターを通した蛍光灯の青に、青フィルターを通した蛍光灯の光を反射させて間接照明とし、壁そのものが発光しているような錯覚を起こしている。それ以外の照明は整理されたデザインのバック棚やテーブルの脚といった家具そのものに特殊な白熱灯の光源を組み込み、青を基調としながらも暖かい空気を増殖させている。

オープンして１ヶ月足らずの現在、地元のデザイン系の人たちを中心に口コミで話題を呼んでいる。

また、店内の間接照明による青のボーダーと同形状のウィンドーからは、店内を望むことができ、通りがかりの一般客の導入も図っている。

沖縄の土地柄のせいか、クライアントの人柄のせいか、施工期間中を始めオープンしてからもここに集まる人たちは温かく和やかな雰囲気を持っている。〈青〉は冷たく透明で、純粋な静寂を感じる。

「ブルーカフェ」は、満月の夜、海の底に漂う淡く、そして濃厚な"生"の気配である。