NOTES
茶漬け分福 「日本のファーストフード」
喫茶店という業態が、様々な異種配合を繰り返し多様なスタイルに変化して、それを「カフェ」と総称される業態を規定する様になって久しい。
ファーストフードと称する業態も様々な展開の可能性を秘めている様な気がする。というのも日本の近世以降、特に江戸を中心に花咲く外食文化の幾つもの業態は、まさにファーストフードであったからである。さらに日本食はそのスタイルの多様性を考慮すれば現代のファーストフードレストランとして様々に展開してゆける可能性を秘めている。
茶漬け分福は、「美味しく炊いたごはんの〆にぴったりの茶を飲みたい」をテーマにお茶をおかずにご飯を食べる新しいスタイルのファーストフード店を目指してデザインされました。
おくどさんで炊き上げた滋味深き味わいのごはんと陶製釜で手炒りされた香り豊かな炒り茶、そして米の天然酵母のみで醸された樽酒、素朴でしかも深く強烈なインパクトは無いが毎日の生活に寄り添う様な食を提供する環境を 深草の黄土、簀(藁)を練り込んだ土、混凝土等様々な土を木鏝で叩いたり、磨いたり、または腐食させたりして、日本の農家屋の様なプリミティブな空間に、尺寸モジュールの畳の椅子とテーブルを均等に配置してミニマムでしかも「暖かな質素さ」を感じる様に丁寧に設計した。
設備は厨房も含めてオール電化で設計されている。ハロゲン電球を変形させたハロゲンヒーターを内蔵したKanteki(七輪)を熱源にしてお湯の温度をはじめ米の炊き加減、料理の全てをまかなっている。基はハロゲン電球なので、これらの調理器具は全て照明用調光機をコンピューター制御し商品毎に調理時間を設定して商品精度を高め、均一な商品の提供が日本料理に必然であった特殊な技が無くても成り立つ様に設計されている。意匠的にもハロゲンヒーターを熱源に使うことで、テーブルに置かれたKanteki(七輪)からは燃えている灯が漏れて文字通り暖かな雰囲気作りの一如を創っている。
ブランドのマスコットである信楽焼の狸の置かれたファサードは、蚊帳を連想させる透け感のある工事用の防音シートで暖簾の様にまた町屋の軒先の形状の様に空間を包み、昼と夜の光の強弱によって外の環境と内側とを見える様で見えない、見えない様で見える昼夜違った表情を見せるデザインにしている。
オープニングパーティーで見られたお客様のスピードの強弱、立ったり座ったり思い思いのポジションでこの空間を楽しんでいる雑多な雰囲気に日本の新しいファーストフードのスタイルがこの茶漬け分福から始まる予感がした。
SPECIFICATIONS
- WEBSITE
- http://www.foodgate.net
- 所在地
- 〒651-0086 兵庫県神戸市中央区礒上通6丁目1-9MKビル1F
651-0086 MK Building 1F, 6-1-9 Isogamidori, Chuo-ku, Kobe City, Hyogo - 撮影
- YFT, / 山田 圭司郎
- 平面図