NOTES

建築の残像とインテリアデザインの建築

洛中に造られた伝統的な町屋の風景に在る歴史的な地点において、恐らく商業的な理由であろう無作為に増築されたタイル張りのファサードは、それ以降の長い年月の中で否応なく存在し町の景色になってしまった。しかし、視点を現代に据えればこの景色も町の営みの総意として創り上げられた景観として尊重しなければならないと思います。

建築の周辺環境と繋がる外皮(ファサード)だけを景観の繋がりとして残し、少し控えた内側に料理屋(此処では天麩羅屋)としての機能を満たした"インテリアデザインとしてのみ成り立つ建築=白い箱"を挿入し、その既存建築の残像と新しい建築とのズレ=差異を創る事で、日常の景色を担保しながら常ならぬ景色が新しい建築の印象を際立たせるようデザインしました。

※ポルトガル語の「テンポーラ(temporas)」／四季に行う斎日」が語源という説があります。カトリックでは、四季に行う斎日(テンポーラ)で祈祷と断食を行い、その間は肉食を禁じ、代わりに野菜や魚に小麦粉で衣をつけて揚げた料理を食べていたそうです。