NOTES
素材感と歴史を感じる空間 / 根源八幡屋礒五郎 大門町店
江戸時代からの老舗であるこの店の施主は、昭和20年代から当地にて店舗を構えご商売をされていました。今回、店舗面積の拡大と販売の効率化を目指し、当社に設計の依頼をいただきました。
善光寺門前というロケーションから、外形はその街並みに馴染む蔵のような漆喰塗りの家型とし、石となまこ壁の基壇に乗せ、屋根は七味を連想させる紋をあしらった巴瓦による本瓦葺きとしました。場所柄、現代建築というよりも、昔からあったような、かつ今後数百年残ることを視野に入れた建物を求められました。それに対し、木と土と紙という昔からある素材を使い、伝統的な形式を踏まえつつ、現代の意識や技術を注入し再構築すること和風という記号に縛られることなく、その要素や形式を積極的に活用していくことを考えました。
店内に入ると、平瓦を敷きつめた三和土・木・漆喰のみで構成された箱の中に、三層分の吹き抜けを貫く光り行灯が、圧倒的な光と開放感を印象付けます。その内部は部屋となっており、行灯は内側に対しても照明となっています。障子といった日本に古来からある柔らかな境界を通して、上階においても店舗の声や気配は伝わり、店舗の状況が伺えるようになっています。物販スペースは、七味唐辛子という小さな商品に解説を加え分かりやすく伝えるということはもとより、そのものの持つ歴史感や素材感、空気感を人の五感に響かせるように環境全体をデザインし、空間を体験しながら必然的に七味唐辛子へと意識が向かうようにデザインコントロールしました。
店名の前に付く「根元」には、物事のおおもと・根本という意味があります。老舗として「根元」を守り続ける、ということはその時代の空気を取り入れつつ、絶えず次の代へと引き継いでいくことだと考えました。以前からそこにあったようで、それでいてどこか新しい。守り続けるということは、変わり続けるということであると思います。
SPECIFICATIONS
- WEBSITE
- http://www.yawataya.co.jp/index.html
- 所在地
- 長野県長野市大門町83
83 Daimon-cho,Nagano-shi,NAGANO - 撮影
- Nacåsa & Partners / 繁田諭
- 平面図