NOTES

長野市善光寺の門前にある八幡屋礒五郎本店は、江戸時代の元文元年1736年から280年以上続く七味唐辛子を販売する老舗です。平成20年2008年に本店の敷地の拡張に伴って、地上3階建て延べ床面積255.6㎡の鉄筋コンクリート造+鉄骨造の新店舗をデザインさせていただきました。

2008年の計画の折にご提案させていただいた「七味唐辛子の調合の復活」が好評によるスペースの拡大に伴うオーダーシステムの整理、「カスタムブレンド」としてのコーナー創り、七味を分解し再構築するスウィーツとコスメの商品開発に伴う売り場の拡張、新しい味噌をカフェ化する「好みの味噌と出汁を選んで自分でドリップする　新商品ミソゴロウ」の為のドリンクカウンターの新設を軸とする「憧れの本店、買いやすさ」の為の改修計画です。

常に時代と並走する商業空間の宿命として、変わり続ける事を求められます。時代の求める共通言語で語らなければ伝わらないのです。しかし、一方で変わるということはアイデンティティーの喪失にも繋がります。2008年竣工当時のコメントに「店名の前に付く「根元」には、物事のおおもと・根本という意味があります。老舗として「根元」を守り続ける、ということはその時代の空気を取り入れつつ、絶えず次の代へと引き継いでいくことだと考えました。以前からそこにあったようで、それでいてどこか新しい。守り続けるということは、変わり続けるということであると思います。」とう言う一文があります。伝統を守りながら常に変わり続ける、この一見相反する行為のバランスは、伝統の軸線上にあるという事で唯一成り立ちます。それこそが新しい伝統となりえるのだと思います。